今日の辻占

tsujiurado2008-07-20

沢村版『つじうらづくし』より「はんじよう(繁盛)」。絵の暖簾には「正札附 現金大安(売) かけねなし」と書いてある。江戸で「現金掛値なし」の商法を始めたのは、後に「三越」となる越後屋呉服店(延宝元年[1673]開店)。当時は信用のある買手に対して、即金ではなく、一定の期日に代金を支払う約束をして(年1回の「極月払い」、年2回の「二節季払い」)、品物を売っていた。この方法だと、コスト(回収時までの金利負担、回収時の人手のやりくり)やリスク(期日前に天災や火災で先方が支払い不能に陥る、等)が発生するため、商品価格はその分を上乗せして設定される。現金掛値なし商法ではその上乗せ分を削減できるし、資本の回転も速められたので、越後屋は短期間のうちに江戸の人気店となることができた。明治初めの経済状況はもっと流動的で、幕府や大名を相手にしていた御用商人達が急速に没落する一方で、新政権に食い込めた商人には巨万の富が転がり込んだ。そんな中で小商人が確実に生き残ろうとすれば、日銭が稼げる現金掛値なし商法を採用せざるを得なかったろう。