2011-07-01から1ヶ月間の記事一覧

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「つらがうらみたよ(面が恨みだよ)」。「一目ぼれ」という言葉があるように、今も昔も恋愛では美男美女であることが有利。そうでない男女の怨嗟の声がこの文句である。添え絵は彩りのかけらもない真っ黒なカラス。

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「かねより心たよ(金より心だよ)」。なかなか気風のいい文句だが、添え絵はお多福の面が付いた熊手。商売繁盛のご利益がある酉の市の縁起物である。本音は「心より金」で、文句の方はリップサービスと見るべきだろう。

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「たよりがきゝたいよ(便りが聞きたいよ)」。遊女が音信のない情夫を気にしているようだ。添え絵は飛脚箱。斎藤月岑が著した『増訂武江年表』の安政元年(1854)の項には「此の頃、町飛脚といふもの市中へ出て、書簡を…

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「ふまれて人になつたよ(踏まれて人になったよ)」。顔見世で値踏みされ、馴染みになった旦那に身請けされ、ようやく苦界から逃れることができた遊女。彼女の「人になる」という言葉の何と重いことか。添え絵は男物の…

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「のほせあがたよ(のぼせ上がったよ)」。添え絵は湯桶と手ぬぐい。銭湯の必需品である。「銭湯の湯にのぼせるにも、遊里の女にのぼせるにも、お金が必要」という繋がりで描かれたのだろうか。

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「むすんたゑんだよ(結んだ縁だよ)」。添え絵は男女の名を書いて結んだ紙縒り。手前は「よしの」&「久松」と書いてあるように見えるが、もし「お染」&「久松」なら宝永7年(1710)に大阪で心中事件を起こしたカップル…

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「初かいからほれたよ(初会から惚れたよ)」。添え絵は盃台。初会には遊女と客が盃を交わす「引付」という儀式がある。顔合わせの意味があるのだが、若い者が盃を中継して酒を注ぎ、それを口に付ける振りをする。酒の…

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「さきをいそくよ(先を急ぐよ)」。添え絵は貸本の山。物語の先が知りたくて、飛ばし読みをするのはよくあること。でも遊里は初会、裏を経てやっと床入りとなる。急ぎたくても急げない場所なのだ。

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「おそろしいこゝろたよ(恐ろしい心だよ)」。添え絵は鬼女の面と杖。廓で怖くて年を食った女性といえば遣手婆。遊女を脅したり、なだめたりしながら、客から金をむしり取る。非情な心がなければ勤まらない因果な商売…

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「一とよきりたよ(一夜きりだよ)」。添え絵は笄と髪紐。

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「てなへさけてもぬしのそは(手鍋提げても主のそば)」。沢村版『つじうらづくし』の「てなべさげてもいとはない(手鍋提げても厭わない)」と同じ状況だが*1、「主のそば」に一途な想いが強く感じられる。添え絵は手…

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「やきもちふかいよ(焼き餅深いよ)」。長火鉢には敷き詰めらた餅。どうやらこれからやけ食いをする気配。女性をここまで追い込んだ男の罪は深い。

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「たかゝとまつているよ(高々とまっているよ)」。添え絵を見ると、肥桶に入った長柄杓にトンボが止まっている。トンボは涼しげに止まっているがその先は汚物。お高くとまった花魁も苦海の住人であることに変わりはな…

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「ゆめにまて見る(夢にまで見る)」。「恋焦がれて愛する人を夢にまで見る」状態なのだが、添え絵は『荘子』の説話にある「胡蝶の夢」。事ここに至れば、「働き者が遊郭に来て遊びに興じているのか、遊客が廓外に行っ…

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「おこりきつているよ(怒りきっているよ)」。愛深ければ、裏切られた時の怒りも深い。「今日行く」と言われて、すっぽかされた時などは。添え絵は「怒る」と「起こる」を掛けて、火鉢の中で真っ赤になった炭火が描か…

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「茶にしてはいやたよ(茶にしては嫌だよ)」。酒席なのに「(下戸なので酒じゃなく)お茶にして」と要求する客は遊女にとって嫌な客だ。茶屋に落とす金は少ないし、酔ってないから手練手管も通じない。添え絵は角型の…

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「しのんておいてよ(忍んでおいでよ)」。以前紹介した沢村版の『つじうらづくし』や『花のたよりこいの辻占』にも同様な文句があるが*1、先方の添え絵が「垣根」であるのに対して、こちらは「衣桁に掛けられた男女の…

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「かこのとりたよ(籠の鳥だよ)」。遊里に押し込められて廓外へ出られない遊女の嘆きが聞こえてくるようだ。添え絵は空の鳥籠。置屋からの解放を待ち望む彼女達の心情を投影したものだろうか。

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「あまくくわせられたよ(甘く食わせられたよ)」。騙される意味で「一杯食わされる」という表現があるが、遊女に甘い言葉で騙されたのだろうか?添え絵は「甘いもの」繋がりで羊羹。経木らしきものに包まれ、紙製?の…

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「ていけのはなたよ(手活けの花だよ)」。添え絵は表の意味に沿って、竹製の花入と花の枝。実は、身請けされて旦那と一緒になった遊女や芸妓のことも「手活けの花」という。辻占菓子は遊里で多く消費されたことから、…

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「たからの山たよ(宝の山だよ)」。添え絵を見ると、台の上にごちゃごちゃと何か載っている。小判らしいものがあることはわかるが、あとは全然わからない。

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「すへひろかりよ(末広がりよ)」。運気「末広がり」に掛けて、添え絵は扇子。表には「日の丸」だか、「花と蝶々」だかが描かれているように見えるが、退色のためはっきりしない。残念。

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「むねかにへかへるよ(胸が煮え返るよ)」。「煮え返る」に関連して、添え絵には湯気を立てた土瓶、瓶掛(小型の火鉢)、団扇が描かれている。

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「ムりなこゝろハみじんもない(無理な心は微塵もない)」。とは言いつつも、添え絵には財布が描かれている。「金に物を言わせる」のが本心だろう。

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「なみたてかいた文(だ)よ(涙で書いた文だよ)」。巻手紙に長々と文をしたためられる程涙を流せるはずもなく、これはあくまで色街の手練手管の一つ。添え絵は硯箱と巻手紙。