2011-10-01から1ヶ月間の記事一覧

膝栗毛滑稽辻占 その21

歌川重政画『膝栗毛滑稽辻占』第20コマは丸子。『膝栗毛』ではとろろ汁店の夫婦喧嘩に巻き込まれて2人が名物を食べ損なうが、こちらでは路傍の焚き火の煙にむせる姿が描かれている。「むねのけむりで気がはれぬ(胸の煙で気が晴れぬ)」は恋の悩みに関す…

膝栗毛滑稽辻占 その20

歌川重政画『膝栗毛滑稽辻占』第19コマは府中。弥次さんが府中に住む親類から路銀を調達したので貧乏旅行はここで終了。この後2人は宿場の西側にある安倍川遊郭へと繰り出している。この絵には出張の床屋が描かれているが、おそらく身づくろいのために宿…

膝栗毛滑稽辻占 その19

歌川重政画『膝栗毛滑稽辻占』第18コマは江尻。原作では江尻は通過だが、こちらでは弥次さんが旅籠で按摩の施療を受けている。気持ちよくて半ばウトウトする弥次さん。一方喜多さんは構ってもらえないのが悔しくて、施療師の頭を足で小突いている。添え文…

神奈川大学日本常民文化研究所特別研究員の中町泰子さんから、『新年の共食機会に見られる占い菓子享受の習俗化―長崎県平戸市と石川県金沢市を中心として―』(神奈川大学日本常民文化研究所 非文字資料研究センター『年報 非文字資料研究』第7号、P.431-455…

膝栗毛滑稽辻占 その18

歌川重政画『膝栗毛滑稽辻占』第17コマは興津。原作で2人は茶店に立ち寄り団子を食べたが、こちらでは泊まっているようだ。添え文は「ふすま一えかまゝならぬ(襖一重がままならぬ)」。先約の隣の座敷からなじみの遊女の声が聞こえるのを切ない気持ちで…

膝栗毛滑稽辻占 その17

歌川重政画『膝栗毛滑稽辻占』第16コマは由比。原作では由比宿の呼び込みをスルーして薩埵峠越えをする2人だが、こちらでは宿に泊まってなにやら待っている様子。そもそも由比は「東海道の親不知」と呼ばれるほどの旅の難所。旅人は急峻な崖下に広がる砂…

膝栗毛滑稽辻占 その16

歌川重政画『膝栗毛滑稽辻占』第15コマは蒲原。お金が無いので宿場はずれの木賃宿に泊まった二人。夜中に起きた喜多さんが二階に上がったところ天井の板を踏み破って落下、一騒動になる。添え文は「わたしやおまへにおつこちだよ(私ゃお前におっこちだよ…

膝栗毛滑稽辻占 その15

歌川重政画『膝栗毛滑稽辻占』第14コマは吉原。『膝栗毛』では宿場を通り過ぎるが、こちらでは弥次さんが座り込んで何かを食べている。実は原作では次の蒲原の宿で喜多八が大名行列の一行に紛れ込み、ただ飯を食べたあげく手ぬぐいに一膳分のご飯を包んで…

膝栗毛滑稽辻占 その14

歌川重政画『膝栗毛滑稽辻占』第13コマは原の宿。*1『膝栗毛』ではここで蕎麦を食べたが、こちらでは喜多さんが旅の侍から煙草の火を借りている。添え文は「はらおたつのもほれたゆへ(腹を立つのも惚れた故)」。*2いかにも辻占紙片にありそうな文句だが…

膝栗毛滑稽辻占 その13

歌川重政画『膝栗毛滑稽辻占』第12コマは沼津。三島から沼津まではわずか一里半(約6km)の距離なので『膝栗毛』では茶屋で休息するだけだが、こちらには弥次さんがスッポンに噛み付かれている絵が描かれている。これは原作では三島宿での出来事。箱根か…

膝栗毛滑稽辻占 その12

歌川重政画『膝栗毛滑稽辻占』第11コマは三島。『膝栗毛』では道中知り合った護摩の灰*1と同宿したせいで、弥次さんが持っていた路銀が奪われた。弥次さんは印伝の財布を100文で売り、喜多さんが出立時に近所の人から託された伊勢神宮への賽銭(12文)と合…

膝栗毛滑稽辻占 その11

歌川重政画『膝栗毛滑稽辻占』第10コマは箱根。箱根といえば関所である。通行人は関所を通る際に笠・頭巾を取って検分を受けた。更に女性は「人見女」という女役人から書類の記載と身体的特徴が合っているかどうかチェックを受けた。*1この絵には頭に手ぬ…

膝栗毛滑稽辻占 その10

歌川重政画『膝栗毛滑稽辻占』第9コマは小田原。『膝栗毛』では喜多さんが下駄で五右衛門風呂の底を踏み抜く場面が有名だが、ここでは喜多さんが先に入っている弥次さんを覗き込んでいる。添え文は「小田原そうだんてきがもめる(小田原相談で気がもめる)…

膝栗毛滑稽辻占 その9

歌川重政画『膝栗毛滑稽辻占』第8コマは平塚。弥次喜多のご両人、『膝栗毛』では沿道の名所にちなんだ狂歌をひねりつつ平塚宿をスルーしたが、こちらのコマでは山盛りの饅頭をパクつく男にびっくりしている。日永(ひなが)の追分(三重県四日市市)にある…

膝栗毛滑稽辻占 その8

歌川重政画『膝栗毛滑稽辻占』第7コマは藤沢。『膝栗毛』によれば、弥次さんと喜多さんが茶店でくつろいでいると江の島へ向かう旅人がやってくる。彼は2人からいいかげんな道案内を長々受けて怒って去っていくが、添え文を見ると「からみつかれた*1ふじ沢…

膝栗毛滑稽辻占 その7

歌川重政画『膝栗毛滑稽辻占』第6コマは戸塚。茶店でおばさんに絡まれ押し黙る喜多さんを弥次さんがニヤニヤしながら眺めている。『膝栗毛』で喜多八は元旅役者という設定なので、女がその美形をぶりを囃し立てているのだろう。添え文の「とつかまへてはは…

膝栗毛滑稽辻占 その6

歌川重政画『膝栗毛滑稽辻占』第5コマは程ヶ谷の宿。厠で用を足そうと弥次さんが帯を解いたところバランスを崩して板壁に激突、釘が外れて板ごと転落。外にいた喜多さんがびっくりという図。『膝栗毛』の該当箇所には記述がないことから、オリジナルなのか…

膝栗毛滑稽辻占 その5

歌川重政画『膝栗毛滑稽辻占』第4コマは神奈川。男が打ち水を弥次さんに掛けてしまい、喜多さんから怒られている。当時の往来は未舗装で、交通量の多い宿場付近は行き交う人や荷車のせいで土ぼこりが立ちやすかった。それを防ぐために水を撒いていたのだろ…

膝栗毛滑稽辻占 その4

歌川重政画『膝栗毛滑稽辻占』第3コマは川崎。「身はいましめのつたかつら(身は戒めの蔦葛)」。十返舎一九の『膝栗毛』に弥次郎兵衛が喜多八を狐が化けたものと勘違いして縛り上げるシーンがあるが、それは赤坂宿(愛知県)手前での出来事。川崎にはその…

膝栗毛滑稽辻占 その3

歌川重政画『膝栗毛滑稽辻占』第2コマは品川。「あさのわかれにひく袖か浦(朝の別れに引く袖が浦)」。早朝日本橋から同道した見送り人は、高輪の大木戸や品川宿の先、鮫洲でお別れをする。その名残惜しそうな情景が描かれている。だが品川宿には岡場所*1…

膝栗毛滑稽辻占 その2

歌川重政画『膝栗毛滑稽辻占』第1コマは日本橋。「お江戸日本橋七つ*1立ち」というように旅立ちの朝は早い。天秤棒で肥桶を担ぐ男を2人連れが「こひのおもにをかたにうけ(恋の重荷を肩に受け)」と洒落のめしているが、当時のし尿は貴重な肥料源(下肥用…

膝栗毛滑稽辻占 その1

これまで「今日の辻占」のコーナーで辻占絵の紹介をしてきたが、本日からはちょっと趣向を変えて辻占にちなんだ玩具絵を眺めてみたい。 今回取り上げるのは歌川重政*1の『膝栗毛滑稽辻占』(画像)。彼は初代広重の弟子で後に広重の養女と結婚して三代広重と…

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』最後のコマは、「はつれはないよ(はずれはないよ)」。当たり矢の封じ目がついた手紙の絵が添えられているが、遊女からお客に出す手管の手紙だろうか?男のハートを射抜いてみせるという自信があふれた文句だ。また、版元が…

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「いつておしまいよ(言っておしまいよ)」。布の入った椀、川、橋の絵が添えてあるが、意味がよくわからない。もしかするとなぞなぞの一種かもしれない。

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「すいな人たよ(好いな人だよ)」。晴れて所帯を持った女性の惚気だろうか。添え絵は家庭の日常のひとコマを切り取ったような風景で、食器を入れた桶に手ぬぐいが掛けてある。

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「とつくりとしあんをおしよ(とっくりと思案をおしよ)」。何の思案を迫っているかはわからないが、添え絵は「とっくり」の音から「徳利」が描かれている。このセンスは地口絵に近い。

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「さましてたんとおあかりよ(冷ましてたんとお上がりよ)」。竃の傍らにお盆に乗ったサツマイモが置いてあるが、この文句は遊女に対する遣り手婆のものだろうか?女性が甘いものを好むのは今も昔も変わりがないが、芋…

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「こゝころにせうまいおろしたよ(心に錠前下ろしたよ)」。錠前が掛かった「心」と書いた絵馬が添えてある。絵馬は神仏に願い事をするために奉納されるが、男女の間での願い事といえば永遠の愛か、縁切り。遊女は金蔓…

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「かたおもいたよ(片思いだよ)」。「磯の鮑の片思い」ということで、添え絵はアワビ。殻の模様が大変リアルなので、スケッチを元にしているのかもしれない。

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「ます花かてきたよ(まず花ができたよ)」。添え絵は咲き初めの桜。花が出来て実を結ぶように、廓ではまず恋の花が咲き、そして身請けの話になるということか。