2008-07-01から1ヶ月間の記事一覧

今日の辻占

沢村版『つじうらづくし』より「いまにふうふになるよ(今に夫婦になるよ)」。苦界の中にいる遊女達は、「身請されるにせよ、年季を全うするにせよ、その先には幸せな結婚生活がある」と思わなければ、過酷な日々を生きていけなかったろう。飾り立てた白木の…

今日の辻占

沢村版『つじうらづくし』より「だますととりつくよ(騙すと取り付くよ)」。幽霊の真似をして脅かしている男が描かれているが、遊女にこんな泣き言を吐くとは。遊廓では騙し、騙されるのが当たり前。その中で、自身の器量と財力を頼りに意中の遊女と楽しくつ…

今日の辻占

沢村版『つじうらづくし』より「しんぼうしておくれ(辛抱しておくれ)」。「日参」と書いた弓張提灯と燭台の絵が添えられているが、この紙片を引いたのが遊客なら「廓に日参するのはやめておくれ」という身内からのメッセージになるし、遊女が引いた場合には…

今日の辻占

沢村版『つじうらづくし』より「やくそくはわすれないよ(約束は忘れないよ)」。腕をまくって入墨を示す男の絵が添えられているが、当時の遊郭では、愛情表現の一つとして(無論、手管としても)、入墨を彫ることが行われた。女は男の名前に「命」の字を加え…

今日の辻占

沢村版『つじうらづくし』より「おもふ人はむかふづら(想う人は向面)」。好きな男がいる座敷からお声が掛かり、ウキウキ気分で出たところ、連れの客の接待に回されて、主様とは畳をはさんで向かい合わせ。心の中では添え絵のように泣きたい気分だろう。

今日の辻占

沢村版『つじうらづくし』より「さきはふじつこつちはうそ(先は不実こっちは嘘)」。「お前だけだよ」と言って二股をかける男。「二世も三世もあなたと一緒」と嘘をつく女。遊郭の中では、狐と狸の化かしあいが果てしなく続く…。

今日の辻占

沢村版『つじうらづくし』より「とふざかるのもおまへのため(遠ざかるのもお前のため)」。大身の者に身請されたのか、それとも遠隔地の遊郭に身売りされたのか、理由はよくわからないが、煙管と道中枕の絵が添えてあることから、この遊女は情夫のいる江戸か…

今日の辻占

沢村版『つじうらづくし』より「みすてもこころはないよ(水でも心は無いよ)」。相手が好意をもてば、こちらもそれに応じる意思があることを、「魚心あれば水心」というが、遊郭は水商売。応じるのはあくまでビジネスで、好意からではありませんということ。

今日の辻占

沢村版『つじうらづくし』より「まち人きたる(待ち人来る)」。6月10日の「来は大吉」と同様、メッセージを補強をするために占いで使う天眼鏡と算木の絵が添えてある。

今日の辻占

沢村版『つじうらづくし』より「きをながくまつておいでよ(気を長く待っておいでよ)」。待合で袂に手を差し入れて宙を眺める男。当の本人は一日千秋の思いで遊女を待っているのだが、傍から見ると、どこか間が抜けている。

今日の辻占

沢村版『つじうらづくし』より「ほねがなければいつしよになりたい(骨が無ければ一緒になりたい)」。「軟派な人と一緒になりたい」という意味か?その一方で絵には行灯と衝立が描かれており、これらは骨組みが無ければ用をなさないため、絵からは「人には気…

今日の辻占

沢村版『つじうらづくし』より「はんじよう(繁盛)」。絵の暖簾には「正札附 現金大安(売) かけねなし」と書いてある。江戸で「現金掛値なし」の商法を始めたのは、後に「三越」となる越後屋呉服店(延宝元年[1673]開店)。当時は信用のある買手に対して…

今日の辻占

沢村版『つじうらづくし』より「そそくさおしでないよ」。散乱する反古の絵。好きな男に形式的でない本気モードの恋文を書いているのだろうか?書き損じの中で苦闘する姿を朋輩に見られてあわてふためく遊女。「そそくさおしでないよ」と茶々を入れられて、思…

今日の辻占

沢村版『つじうらづくし』より「こゐはしあんのほか(恋は思案の外)」。恋は、理性・常識ではコントロールできないもの。添えてある絵は長文の巻手紙のようだ。遊郭通いをたしなめる親戚筋からの諌めの手紙だろうか?もらった本人は上の空で、今日も女の許へ…

今日の辻占

沢村版『つじうらづくし』より「男づくではほれないよ(男ずくでは惚れないよ)」。6月4日の「金づくではほれないよ」とは反対の文句。たとえ男の意地を貫き通す好漢であっても、お金がなければ願い下げということで、銭や藩札の絵が添えてある。

今日の辻占

沢村版『つじうらづくし』より「にようぼうやくそくきつとだよ(女房約束きっとだよ)」。「年季が明けたら、あなたの女房になります」と約束する遊女の手紙。とはいえ、本当に結婚してくれる保証はどこにもない。結婚を餌に通わせ、絞れるだけ金を絞り取るこ…

今日の辻占

沢村版『つじうらづくし』より「まけおしみがつよいよ(負け惜しみが強いよ)」。一人の女性を巡って複数の男が恋の鞘当を繰り広げるのは、フィクションに限ったことではないが、周囲から見て相撲のように勝ち負けの経緯がわかる代物ではないため、様々な憶測…

今日の辻占

沢村版『つじうらづくし』より「じやけんな人がいいのだよ(邪険な人がいいのだよ)」。誰が?ということで絵を見ると、散乱した櫛や笄が描かれている。櫛、笄で身を飾り、通って来る男に金品を貢がせる遊女にとって、「邪険」は美徳の一つだったのだろう。男…

熊野牛王宝印

昨日の「今日の辻占」で紹介した「熊野牛王宝印」の現物が手元にあったので、参考までに画像をUPしておく。こちらは「熊野本宮大社」のもので、88羽の烏文字を用いている。社務所が出している解説書には、「熊野権現への誓約を破ると熊野大神の使である烏…

今日の辻占

沢村版『つじうらづくし』より「二世も三世もさきのよまで(二世も三世も先の世まで)」。2006年5月27日の「二世もさん世もかはらぬみよと(二世も三世も変わらぬ身よと)」(加賀吉版『新板こゐの辻占』)とほぼ同じ事を言っている。こちらの二枚の紙の絵は…

今日の辻占

沢村版『つじうらづくし』より「おまへにかぎるよ(お前に限るよ)」。添えられている絵は、仁王襷、七本車鬢の鬘などの姿から歌舞伎『矢の根』の曾我五郎時致と思われる。顔全体を赤く塗って隈取を描くのをごまかしているが、これは台詞の中にある、「我鯱鉾…

今日の辻占

沢村版『つじうらづくし』より「てなべさげてもいとはない(手鍋提げても厭わない)」。ひとたび遊郭に上がったからには、役人や大店の「奥様」になることを望むのが普通なのに、この遊女は「惚れた男と一緒になれるなら、自分で食事の準備をするような貧乏暮…

今日の辻占

沢村版『つじうらづくし』より「どうでもかつてにおしなはいよ(どうでも勝手におしなさいよ)」。4月24日の「すけべいでへつぴりだよ」の絵に似た線が口から放射されており、これで怒声を表しているのだろう。

今日の辻占

沢村版『つじうらづくし』より「おかゆにもちだよ(お粥に餅だよ)」。「鬼に金棒」的な意味であろうか?客の相伴にあずかることの多かった遊女の普段の食事は質素で、古米のご飯に、芋の煮っ転がし、小魚の干物程度だったという。*1食べると体力がつく餅粥は…

今日の辻占

沢村版『つじうらづくし』より「かんがへてごらんよ(考えて御覧よ)」。江戸時代、武士や庶民は「月代(さかやき)」といって頭頂部を剃ったが、学者、医者、神官、公家などは頭頂部を剃らない「総髪」という髪型をしていた。この絵が添えられたのは、総髪が…

今日の辻占

沢村版『つじうらづくし』より「うせものはいまにでるよ(失せ物は今に出るよ)」。袋に入った刀と鏡らしきものの絵が添えてあるが、刀、鏡、いずれも霊力が宿る物として様々な呪術に使われる事から、6月10日の「来は大吉」同様、メッセージを補強するために…

今日の辻占

沢村版『つじうらづくし』より「かねのあるうちはほれている(金のあるうちは惚れている)」。まあ、遊郭はそんな所だから…。遊郭側は客に幻想を抱かせたいのだが、辻占絵にこういったメッセージが堂々と載っているところを見ると、製作者は遊郭側、客側のい…

今日の辻占

沢村版『つじうらづくし』より「おしがつよいよ(押しが強いよ)」。恋でも仕事でも押すばかりでは相手が困惑するだけですよ、ということで添えられているのが漬物樽に乗った沢庵石の絵。あまりにも即物的な添え絵だが、1月23日に紹介した「ねんおをしておや…

今日の辻占

沢村版『つじうらづくし』より「きれるといやだよ(切れると嫌だよ)」。凧の絵から、この文句を「凧の糸が切れると、風に吹かれてどこに飛んでいくかわからないから嫌ですよ」と解釈したくなる。しかし、凧の種類について注目してみると、江戸で最も一般的だ…

今日の辻占

沢村版『つじうらづくし』より「ふくがくるよ(福が来るよ)」。大黒天には様々なバリエーションがあるが、大きな袋を肩に掛け、槌を持ったこちらのオーソドックスな大黒様には、「摩伽羅大黒」という名が付けられている。飯塚米雨編『仏像図絵』(東方書院、…