膝栗毛滑稽辻占 その17

tsujiurado2011-10-27

歌川重政画『膝栗毛滑稽辻占』第16コマは由比。原作では由比宿の呼び込みをスルーして薩埵峠越えをする2人だが、こちらでは宿に泊まってなにやら待っている様子。そもそも由比は「東海道の親不知」と呼ばれるほどの旅の難所。旅人は急峻な崖下に広がる砂浜を歩いて次の宿場へと向かったが波にさらわれる者もあったため、峠越えの迂回ルートが作られた。由比宿が載っている膝栗毛の二編が出版されたのは享和3年(1803)だが、その後嘉永7年(1854)に安政東海地震が発生して海岸部が隆起して今日のように沿岸を進むルートが主流となった。沿岸に道が出来ても台風などで海が荒れると波が押し寄せ、今日の東名高速道路のように通行不能となる。峠越えをしない旅人は由比の宿で海が静かになるのを待つしかないのである。添え文は「まつはういものつらいもの(待つは憂いもの辛いもの)」。「憂い」と「由比」が掛けてある。