沢村版『花のたよりこいの辻占』より「ほんとふにしてまつているよ(本当にして待っているよ)」。「何を」ということで絵を見ると、「鼠鳴き(ねずみなき)」をする女が描かれている。口をすぼめて「チュウチュウ」と音を立てる鼠鳴きは、昔から客を引くおまじないとして遊廓で広く行われた。夕方、神棚を拝んだ後に柱を手のひらで叩いて鼠鳴きをしたり*1、始業前に見世先に娼妓達が並び、火打石を持った番頭から一人ずつ切火を受ける際に鼠鳴きしたり、見世先に水を撒く際に、外から内に向かって鼠鳴きしながら「入」という字を書くように撒いたりする*2のがその一例。この文句は遊女が馴染みの客に宛てたメッセージだろう。