今日の辻占

tsujiurado2008-08-31

沢村版『花のたよりこいの辻占』より「ほんとふにしてまつているよ(本当にして待っているよ)」。「何を」ということで絵を見ると、「鼠鳴き(ねずみなき)」をする女が描かれている。口をすぼめて「チュウチュウ」と音を立てる鼠鳴きは、昔から客を引くおまじないとして遊廓で広く行われた。夕方、神棚を拝んだ後に柱を手のひらで叩いて鼠鳴きをしたり*1、始業前に見世先に娼妓達が並び、火打石を持った番頭から一人ずつ切火を受ける際に鼠鳴きしたり、見世先に水を撒く際に、外から内に向かって鼠鳴きしながら「入」という字を書くように撒いたりする*2のがその一例。この文句は遊女が馴染みの客に宛てたメッセージだろう。

*1:参照:『新吉原画報』温故社 明治31年、P.31-32

*2:参照:『古老がつづる 下谷・浅草の明治、大正、昭和8』台東区下町風俗資料館、平成5年、P.4-5