沢村版『花のたよりこいの辻占』より「わるいはまくりはどくになるよ（悪い蛤は毒になるよ）」。竹篭と蛤の絵が添えてあるが、遊客からのお土産であろうか。今でこそ珍しい物になってしまったが、当時東京湾の奥部は蛤の好漁場で、その名残は浦安や千葉の焼き蛤屋に見ることができる。江戸前の蛤だから新鮮そのものと言えそうだが、やはり貝類だけに傷みやすく、食中毒が怖い。もしこの文句に裏の意味があるとしたら、婚礼の宴の定番メニュー「蛤の吸い物」からの連想だが、「悪い相手と一緒になると、身の破滅ですよ」と警告しているのかもしれない。
