膝栗毛滑稽辻占 その34

歌川重政画『膝栗毛滑稽辻占』は十返舎一九の『東海道中膝栗毛』の二次創作である。32コマ中18コマ、川崎、戸塚、藤沢、平塚、小田原、沼津、吉原、蒲原、藤枝、嶋田、金谷、掛川、日坂、袋井、浜松、舞坂、新居、藤川の絵が原作に由来している。このうち原作通りの場所に描かれたものは藤沢、小田原、蒲原、嶋田、金谷、掛川、袋井、浜松、舞坂、新居、藤川。ずれた場所に描かれたものは戸塚、沼津、吉原、藤枝、日坂。川崎、平塚は大きく離れた場所(前者は赤坂宿の手前、後者は日永の追分)での有名なエピソードを借用している。残りは重政のオリジナルであるが、原作では通過した宿場で休んだり、泊まったりと不自然な気がする。これは師・歌川広重の『東海道五十三次』に倣って各宿場を描こうとしたからだろう。重政はこの錦絵を発表した翌年に三代広重を襲名するが、その野望を胸に秘めながら製作に当たったのだろうか?藤枝と日坂のコマを入れ替えて、「こゝろの駒がくるひだす」という添え文を日坂のコマにあてがっているが、そういった実験も野心の反映に思えてくる。