『博多小女郎波枕』と辻占

  • 『博多小女郎波枕』と辻占

近松門左衛門享保3年[1718]に書いた『博多小女郎波枕』には、以下の下りがある。

まさしかれと心中にたのみをかけし辻占の、
かごかきが詞のはづれ惣七が胸にこたへ、
かゝらぬなはに気をしばられむかふの人はおるれ共、
我心から身をすくめ、

惣七は、駕籠に乗り込む際に駕籠かきに「駕籠賃はころり(銭百文)」と言われてその意味が理解できなかった。この「ころり」の意味がわからなかったことが引っかかり、彼はこれが不吉な前兆を示しているのではないかと感じる。「ころり」を「ころぶ」、「倒れる」と受け取ったのだ。また、文中に「まさしかれ」という一節があるが、これは『艶道通鑑』などにある「辻や辻四辻がうらの市四辻 うら正かれ辻うらの神」の呪文を踏んでいるのであろう。