江戸以外での幕末維新期の辻占菓子

tsujiurado2008-03-23

  • 江戸以外での幕末維新期の辻占菓子

これまでずっと江戸の辻占菓子について見てきたが、この時期、他の地域ではどうだったのだろう?
幕末頃の大阪で作られたとみられる『浪花みやげ』という摺物を集めた本には、昆布を持った女性(写真)を描いた『辻占言葉の種』という辻占尽が収録されている。辻占尽とは細かいマス目の中に辻占文句を書いたもので、業者はこのシートを切断して辻占文句の紙片を作り、菓子に添える。小生は昆布を持った女性の絵から、『辻占言葉の種』から作られた紙片は「辻占昆布」に使われたと思っている。辻占昆布は落語『辻占茶屋』にも登場することから、ご存知の方も多いだろうが、当時の製法はよくわかっていない。大阪には昔から昆布を結んで砂糖をまぶした「みづから」という菓子(式亭三馬の『浮世床 二編』[文化11年、1814]に芝居小屋で立ち売りされる描写有り)があるので、これに近いものだったのかもしれない。
また、大阪以外での記録としては、嘉永4年[1851]の『指使編』(尾張)に「辻裏せんべい・踏れた撥に汗が出る」の笠付が、また安政6年[1859]の『呉竹集』(尾張)に「辻占昆布・巻き付き合った鈴直す」の笠付があり、ここから当時、尾張地方でも辻占煎餅や辻占昆布が食されていたことがわかる。