遠月堂の辻占煎餅と『はうた辻占せんべい』(辻占本)

  • 遠月堂の辻占煎餅と『はうた辻占せんべい』(辻占本)

2008年3月16日の辻占雑記帳「辻占煎餅と大黒煎餅」で、上田市立図書館花月文庫所蔵の『は唄恋の辻うら』について言及したが、この度、同一本と思われる『はうた辻占せんべい』を入手した。
序文は甲南女子大学文学部の菊池眞一教授が指摘したもの(菊池真一「辻占都々逸研究」<『甲南国文第52号』(平成17年3月、P.54)>)と同じで、花月本で一部不明だった序題は「端唄辻占選餅初編序」であったことがわかる。
今回紹介するのは本の内容ではなく表紙である。画像はその一部を拡大したものだが、中央に役者の似顔と「よいしゆびだよ」という辻占文句を書いた紙片が、下には2008年3月17日の辻占雑記帳「幕末維新の辻占煎餅名店めぐり1 「遠月堂」 」で紹介した「続々商牌集 其二 遠月堂菓子店  木村捨三」(趣味誌『集古』昭和8年9月号、集古会、P.501)に登場する「お手遊煎餅位のものを二つに折りて、丈二寸五分、巾一寸五分程の本の形ちになし」た辻占煎餅と同じ形の煎餅が描かれている。
更に、表表紙の見返しには「遠月堂緑谷」の商標の絵が描かれている。以上のことから、『はうた辻占せんべい』に描かれている煎餅は、遠月堂のものと考えてよいだろう。当時の菓子の姿を表紙に描いた本。珍本の部類に入るのではないか。