『艶道通鑑』と『本津草』に見る辻占

  • 『艶道通鑑』と『本津草』に見る辻占

正徳5年[1715]、神道家増穂残口によって書かれた『艶道通鑑』神祇之巻十二にこうある。

黄楊の櫛を持って道祖神を念じて、四辻に出て自分が思っている事が叶うか否かを占う。
「辻や辻四辻がうらの市四辻 うら正かれ辻うらの神」こう三返唱えて、その辻へ先に来る人の言葉により吉凶を占う。これを黄楊の小櫛という。黄楊を告と祝してなったのだろう。亀トや灰占などは恋ばかりではなく何事にも用いるけれど、黄楊の占は恋にのみ用いる。占いの結果は神慮に委ねて、私心の入り込む余地を排している。

古代には様々なことが夕占(=辻占)で占われたのに、この書では「黄楊の占は恋にのみ用いる」と断言している。これ以降、「辻占=恋占い」という見方が浸透していく。
享保8年[1723]に成立した人見英積著の神道書『本津草』太占之ト事では、辻占の占法を次のように説明している。

(前略)往古より伝えたる「辻うら」という占いがある。黄楊の櫛を持って道祖神を念じて、四辻に出て自分が思っている事が叶うか否かを占う。
「辻や辻四辻がうらの市四辻 うら正しかれ辻うらの神」こう三返唱えて、その辻へ先に来る人の言葉により吉凶を占う。これを黄楊の小櫛という。黄楊を告と祝してなったのだろう。上古の亀トは恋ばかりではなく何事にも用いるけれど、黄楊の占は恋にのみ用いる。占いの結果は神慮に委ねて、私心の入り込む余地を排している。

内容は『艶道通鑑』とほとんど同じなので、『艶道通鑑』から直接引いたか、又は『艶道通鑑』が引用したのと同じテキストから引いたかの、いずれかであろう。