大正以降の辻占菓子その1

  • 大正以降の辻占菓子その1

ここでは、大正以降の辻占菓子を、特許・実用新案資料を中心に見ていく。
(1)煎餅
・「山田式教育辻占煎餅」(実用新案第33810号)
出願:大正3年6月12日 登録:大正3年12月14日
実用新案権者(考案者) 豊橋市大字魚百二十八番戸 山田安平
巻煎餅を中間で切断して紙片を取り出し易くしたもの。はずれにくくするため、煎餅を接合した上から海苔を巻いている。また 山田氏は海苔のないバージョンを「山安式教育辻占煎餅(実用新案第37425号 大正4年)」として出願、登録している。
・「炙り出し煎餅製造法」(昭和9年特許出願公告第1394号)
出願:昭和8年6月9日 公告:昭和9年4月11日
出願人 発明者 小倉市魚町四丁目一六二番地 田部為一郎
煎餅に紙片を入れるのではなく、煎餅そのものを炙って辻占の文句を浮かび上がらせる特許。その工程は、[1]煎餅の表面に卵の白味あるいはゼラチンを塗って乾かしておく[2]玉葱の煎出液を骨炭で濾過し食塩を加えた液を作る[3]その液で任意の文字を描く[4]裏面には砂糖等の溶液を塗る、というもの。裏面に砂糖などをコーティングしたのは、炙り出し液の不味さを補う必要があったためか。
(2)最中…いずれも明細書がないため、詳細は不明。
・「巾着形辻占最中」(登録意匠第9779号)
出願:大正3年5月14日 登録:大正3年6月13日
大阪市東区東平野町四丁目八百七十八番地 芳野熊蔵
・「尾乃ゑ(辻占菓子最中)」(登録意匠第12989号)
出願:大正5年11月19日  登録:大正6年1月18日
大阪市西区三條通三丁目三十一番地 藤坂甚三郎
藤坂甚三郎はこの他に辻占菓子として、「庚申宇らない」(12368号)、「住吉宇らない」(12369号)の意匠登録をしている。
(3)餅花 
・「駒形餅花辻占」(登録意匠第14221号)
出願:大正7年6月23日  登録:大正7年9月5日
大阪府中河内郡枚岡南村大字四條二百八十番地の五 山田米三郎
餅花は餅を薄く伸ばして円く平らに切り彩色したもので、繭玉のように小正月に柳の枝などにつけて神棚に供える。「駒形餅花」とあることから、馬の形をした餅花に辻占紙片を添えたものと思われる。枚岡南村大字四條には瓢箪山稲荷神社があり、「つくはねおみくじ辻うら」のように当時参道で売られていたのかもしれない。
(4)粉末飲料 
・「辻占入粉末飲料」(登録実用新案第47557号)
出願:大正7年4月1日  登録:大正8年1月24日
実用新案権者(考案者)東京市牛込区神楽町一丁目一番地 市丸団治
粉末飲料の容器を覆う形で紙片を添え、それを外殻で包むという方法。粉末飲料の材料は「重曹」、「酒石酸」、「砂糖」で、これを水に溶かして炭酸飲料を作るというもの。懐中汁粉がヒントになったと思われる。
(5)アイスキャンデー
・「アイスキャンデー」(登録実用新案第114628号)
出願:昭和2年6月10日 公告:昭和2年12月1日
出願人 考案者 久留米市呉服町七番地 秦 栄
アイスキャンデーに挿す平板に辻占文句を書く構造。今日見る「当たり付きアイス」に繋がる商品。