瓢箪山稲荷神社と辻占占紙 その3

瓢箪山稲荷神社のあぶりだし辻占は、明治35年の観光ガイドブック『大坂遊覧案内』に「瓢箪山の稲荷社は駅より二里余にあり、あぶりだしの辻占を以て名高きところとす」とあることから、同年には授与されていたことがわかる。さらに明治27年に書かれた小泉八雲の『日本瞥見記』第七章「神々の首都」には、松江の夜商人の売り声に関連してこういう一節がある。

「河内の国、ひょうたん山、恋の辻占!」これは辻占といって、小さな薄ぼけた絵のついた、きれいな色紙の恋の占いを売り歩く声である。その色紙を火かランプであぶると、目に見えないインキで書いてある文字が紙のおもてにあらわれる。文字はきまって恋人に関する文句で、時にはあまりこちらの知りたくないようなことも書いてある。幸運にめぐまれたものが読めば、いよいよ幸先のいいことを真に受けて信じ込む。そのかわり、運の悪いものは何もかもあきらめてしまうし、嫉妬の深いものは、さらに輪をかけて焼餅ぶかくなる。(一部現漢字を使用)

八雲の含蓄ある感想はさておき、「河内の国、ひょうたん山」という売り声から、ここで販売されていた占紙が瓢箪山稲荷神社のものである可能性が出てくる。今、神社で授与しているあぶりだし辻占は藁半紙に辻占文句を書き付けたものだが、過去には「小さな薄ぼけた絵のついた、きれいな色紙」を使った占紙があったのかもしれない。