辻占占紙

辻占研究者の中町泰子さんから、論文『近代の辻占発行元−大阪・榎本法令館の出版と販売−』(風俗史学会『風俗史学』第38号、P.49-69)の抜刷をいただきました。 「辻占占紙」の章で度々取り上げた榎本法令館の成り立ちと辻占占紙への関わりを、創業者の子…

昭和B級文化研究家の串間努さんから、辻占自販機に関連する情報をいただきました。それによると、戦前(昭和10年代)に発行された『日本娯楽商報』(日本娯楽機製作所のパンフ)の中に以下のような下りがあるとの事。 (1)「普通おみくじ機」…「此機械は石…

第二次大戦後の辻占占紙

第二次大戦後の辻占占紙 戦後の混乱期、辻占占紙は困難に直面した。紙は統制品となり、人々は日々の暮らしでせいいっぱい。辻占売から占紙を買うゆとりなどなかった。また、戦時中の「神国日本」の反動からか、戦後、日本人の信仰心は希薄になり、辻占そのも…

進化する辻占自販機 その4

進化する辻占自販機 その4 4.「辻占箱の改良」(実用新案第224359号) 出願:昭和10年6月21日 公告:昭和11年1月18日 出願人 考案者 朝鮮京城府古市町十四番地 三浦泰幹、岩本明 硬貨を投入すると、「捲籤煙草」が辻占箱下方の取り出し口…

進化する辻占自販機 その3

進化する辻占自販機 その3 3.「自働販売機附吸殻受」(実用新案第178159号) 出願:昭和7年1月29日 公告:昭和8年1月18日 出願人 考案者 東京府豊多摩郡千駄ヶ谷町原宿二二三番地 森川廉 自動販売機付きの吸殻受。硬貨を投入すると紙巻煙草…

進化する辻占自販機 その2

進化する辻占自販機 その2 2.「自働辻占箱」(実用新案第65833号) 出願:大正10年5月5日 登録:大正11年9月11日 実用新案権者(考案者) 山口県都濃郡鹿野村大字鹿野上第二千八百九十八番地 宮本重胤 辻占の自動販売機を改良して、前扉の…

進化する辻占自販機

進化する辻占自販機 占紙の販売方法には人を介する方法の他に、自動販売機によるものがある。その始まりについては4月27日の「東京の辻占占紙 その1」で取り上げたが、その後、辻占の自販機はどのような進化を遂げたのだろうか?特許関連資料を元にして、そ…

大正以降の辻占占紙 その5のおまけ

大正以降の辻占占紙 その5のおまけ 10.「やきぬき辻占」(はりまや商店、小生所有)の占紙の画像。辻占文句は「第四十九大吉 あきないに利あり」、「第五十末吉 何事も悲観すべからず」、「第五十一吉 大なる望すべからず」、「第五十二吉 浩然の気を養ふ…

大正以降の辻占占紙 その5

大正以降の辻占占紙 その5 9.「モダーンアブリ出シ辻占」(はりまや商店、小生所有) 画像左の辻占占紙。裏には「此のあぶり出し辻占は思ふ事を書いて火にあぶれば答へ出る」、「大阪市北区吉山町五三 発売元 はりまや商店」とある。(一部漢字を現漢字で…

大正以降の辻占占紙 その4のおまけ

大正以降の辻占占紙 その4のおまけ 7.「大入りげんや辻占」(田村栄太郎発行、昭和7年、小生所有)の占紙の画像。

大正以降の辻占占紙 その4

大正以降の辻占占紙 その4 7.「大入りげんや辻占」(田村栄太郎発行、昭和7年、小生所有) 袋の表には花魁が描かれており、「大入りげんや 一力直しおいらん 辻占」と記されている。(画像)中の占紙の内容は易占風ではなく、神社・仏閣のおみくじに近い…

大正以降の辻占占紙 その3

大正以降の辻占占紙 その3 5.「出雲たより御辻占」(法令館発行、大正2年、川崎市市民ミュージアム蔵) 中町泰子さんの『狐がくわえた辻占 移動と芸による占紙販売』(『見世物4号』見世物学会・学会誌 2007年11月に掲載)の中で紹介されている占紙。袋…

大正以降の辻占占紙 その2

大正以降の辻占占紙 その2 3.「御つじうら」(高島神易館、大正2年、東京・中山榮之輔氏蔵) 企画展『呪いと占い』の図録P.75で紹介されている。美人肖像及び都々逸入り。表に「鳥居」と「瓢箪」の絵が描かれ、「稲荷大明神」と記されていることから、瓢…

大正以降の辻占占紙 その1のおまけ

大正以降の辻占占紙 その1のおまけ 1.「阿部清明獨判断」(法令館発行、大正3年、小生所有)の占紙の画像。

大正以降の辻占占紙 その1

大正以降の辻占占紙 その1 前章で述べたように日露戦争以降辻占菓子売は次第に姿を消していき、占紙を売る辻占売が増えていった。そのため辻占占紙の需要が高まり、瓢箪山稲荷神社だけではなく、民間の業者も占紙を手掛けるようになった。 1.「阿部清明獨…

東京の辻占占紙 その2

東京の辻占占紙 その2 明治43年6月の『文芸倶楽部第十六巻第八号』に安田善之助が「松の舎」のペンネームで「吉原の露店」という一文を寄せているが、そこに辻占売の集団スリが登場する。詳細は以下の通り。(文章中に一部不適切な表現があるが、言葉に配…

東京の辻占占紙 その1

東京の辻占占紙 その1 一方、東京における辻占占紙の出現時期ははっきりしていない。 明治13年の『團團珍聞第百五十三号』には、「一しきり東京にてあぶり出し恋の辻占と云ふもの流行せしが」という下りがあって、この時期東京で炙り出しの辻占が流行した…

瓢箪山稲荷神社と辻占占紙 その4

瓢箪山稲荷神社と辻占占紙 その4 瓢箪山稲荷神社のやきぬき辻占は、いつ頃発明されたのだろうか?尾崎紅葉の日記『黄梅日録』を見ると、明治36年6月13日に、紅葉が関西方面の新婚旅行より帰ってきた安田善之助(後の安田財閥二代総帥)から「瓢箪山や…

瓢箪山稲荷神社と辻占占紙 その3

瓢箪山稲荷神社と辻占占紙 その3 瓢箪山稲荷神社のあぶりだし辻占は、明治35年の観光ガイドブック『大坂遊覧案内』に「瓢箪山の稲荷社は駅より二里余にあり、あぶりだしの辻占を以て名高きところとす」とあることから、同年には授与されていたことがわか…

瓢箪山稲荷神社と辻占占紙 その2

瓢箪山稲荷神社と辻占占紙 その2 明治初年に山畑阿良美(顕海)が発明した占紙はどのようなものだったのだろうか? 瓢箪山稲荷神社の社報『瓢山 第十八号』(平成8年)には、現在の「おみくじ辻占」と形式、判断項目がほとんど同じの「百年以上前の木版の…

瓢箪山稲荷神社と辻占占紙 その1

瓢箪山稲荷神社と辻占占紙 その1 辻占占紙の成り立ちは大阪と東京とでは大きく異なるため、まず先に出現した大阪の状況から述べる。大阪の辻占占紙には、瓢箪山稲荷神社が大きく関わっている。同社の社報『瓢山 第十四号』(平成4年)で紹介されている現宮…

辻占占紙とは

辻占占紙とは これまでずっと辻占菓子について見てきたが、辻占売の中には辻占菓子ではなく、辻占文句を書いた御神籤のような紙を売る者もいた。ここでは、その御神籤のような紙に対して「辻占占紙(略して「占紙」)」という名称を与え、その成立や普及の歴…