大正以降の辻占占紙 その2

  • 大正以降の辻占占紙 その2

3.「御つじうら」(高島神易館、大正2年、東京・中山榮之輔氏蔵)
企画展『呪いと占い』の図録P.75で紹介されている。美人肖像及び都々逸入り。表に「鳥居」と「瓢箪」の絵が描かれ、「稲荷大明神」と記されていることから、瓢箪山稲荷神社との関連を誤認させる作りになっている。中身は「おみくじ型の辻占」との事。(中の占紙は小生未見)
4.「神易辻占」(法令館発行、昭和3年、『土のいろ第七巻第一号』[昭和5年1月]P.137-139参照)
昭和5年1月の『土のいろ』で紹介されている占紙。袋の表には「鳥居」、「瓢箪」、「狐」の絵が描かれ、「稲荷大明神」と記されている。この構図は「御つじうら」のものと似ている。袋の裏には「精神の統一(  )信して占へバ的中する事如神」と書いてあり、こちらは「阿部清明獨判断」や「吉凶はんじ辻占」の記述とほぼ同じ。袋の裏には更に「高島神易館本部蔵版」とあるが、中に入っている「神易辻占」のスケッチを見ると、編輯兼発行者として「大阪市南区松屋町三十九番地 榎本松之助」、発行所として「大阪市南区松屋町末吉橋北 法令館」の名が見える。この占紙や先の「阿部清明獨辻占」を実質的に編集、印刷、販売していたのは、当時暦本や実用書を扱っていた大阪の書店「榎本法令館」で、高島神易館は「名義料」的なものを受け取るに過ぎなかったと思われる。ちなみに、この「神易辻占」は静岡県磐田市善導寺の門前で行商人が狐に引かせて売ったもの。(寺は当時中泉駅*1の前にあり、昭和42年に区画整理のため現在地に移転した)占紙の販売形態については、「辻占売」の章で後日まとめて考察したい。

*1:昭和17年、「磐田駅」に改称