昭和B級文化研究家の串間努さんから、明治38年2月発行の雑誌『婦人と子ども』(第五巻第二号)に「辻占のお菓子」という記事があるという情報をいただきました。
調べてみると東京盲唖学校の平岩学洋氏が辻占菓子の現状を憂えて、紙片の文句の改良を5ページにわたって訴えていました。その概要は以下の通り。

・辻占(紙片)は人を慰め楽しませて、一興を与えるために作られているが、その文句は一つとして碌な事は書いてい
ない。風俗上社会上差支えないもの、意味はそのままで言い回しを変えたものにしてもらいたい。
・辻占は子供にとって危険千万。道徳上の問題に影響する事頗る大。
・幼年児童は紙片の意味が分からず兄姉に尋ねるが、概して満足な答えが得られない。子供を善導できる答えを与
えるべきだが、道徳的に思わしくない文句の時はその場で文句をでっち上げて回答することも必要。
・文句の意味がわかる大きな子供に対しては誤魔化しができず、道徳上も生理上も刺激を与えることは必至。
・こんなつまらない菓子は子供に与えず、買わせず、目に触れさせず、幼児の時からこの類の菓子を買ったり食べた
りしてはいけないと習慣付ける事が必要。
・私は辻占の菓子を頭から駄目とは言わない。文句を教訓的なものに改良して、自然に子供を教育するために利用
すべきだ。
・社会改良の一環として商売第一の菓子会社へ教育関係者の働きかけを期待する。

今日残る辻占尽を見るとその後も艶っぽいものが作られ続けているので、辻占紙片の文句の改良は呼びかけで終わったようですが、キャラメルの中箱やガム鞘に豆知識を印刷するアイディアに通じるところがあって興味深く感じました。