2011-01-01から1年間の記事一覧

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「はらかくろいよ(腹が黒いよ)」。添え絵としてお歯黒の時に使う五倍子と鉄漿水が入った壷が描かれていることから、絵師は「歯が黒いよ」と誤読したようだ。

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歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「ほくにはせぬよ(反古にはせぬよ)」。添え絵は巻手紙。遊女が切々と綴ったラブレターである。「生まれ変わっても一緒にいたい」といった言葉を書き連ねるのは、男心を引き留めるための手練手管。その手紙を反古にし…

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歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「はなしがあるよ(話があるよ)」。添え絵は一ひねりして寄席の貼り紙。「噺があるよ」ということらしい。「玉輔」は初代五明楼玉輔、「馬吉」は三代金原亭馬生のニックネーム。二人は初代馬生の門人で玉輔が兄弟子、…

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歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「見れはみるほとあいそかつきるよ(見れば見るほど愛想が尽きるよ)」。むつまじかった男女の仲もいったん冷え始めると坂道を転げるように悪くなるもの。終いには顔も見たくない気持ちになって、こんな文句を吐くのだ…

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歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「まつみはつらいよ(待つ身は辛いよ)」。遊郭は客が来て初めて商売が成立する。なじみの客が来ないと商売上がったりだから、辛いのはよくわかる。添え絵には「待つ」と「松」を掛けて、松の盆栽が描かれている。

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「あいほれたよ(相惚れだよ)」。一方添え絵は土中に埋められた藍甕と染められた布。「藍しぼれたよ」という意味だろうか?こじつけにしてはかなり苦しい気もする。

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歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「ぬれてかへるよ(濡れて帰るよ)」。添え絵は店名入りの傘。急な雨でお店が差し出す傘を断る客。人目につくとまずい店に行っていたのかと勘繰りたくなる。(添え絵の店名は版元のものか)

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「みつあけたよ(水揚げだよ)」。水揚げとは廓の一大イベントで、禿が新造となってはじめて客を取ることをいう。相手には通人の旦那が選ばれ、関係者には祝儀が大盤振る舞いされた。一方添え絵では、生け花と水を注い…

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歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「おさけはおよしよ(お酒はおよしよ)」。添え絵は、袴代わりに酒枡に入れられた銚子と突き出しの小鉢。遊里や家ではなく居酒屋の雰囲気がする。呑み屋通いをたしなめるおかみさんの声だろうか。(画像の画質が以前と…

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「すましているよ」。添え絵は桶2つと柄杓。濁った井戸水を澄ませるために放置しているようだ。酒席でツンとすましている花魁も苦海で泥水をすすっていることを暗示しているのだろうか。もしそうなら、7月13日の「たか…

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歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「はなをおさきにつかふよ(花をお先に使うよ)」。花魁を先にこちらの座敷で使うよということで、添えられたのが夜桜の絵。お花見もお座敷もメインは花ということらしい。

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「つらがうらみたよ(面が恨みだよ)」。「一目ぼれ」という言葉があるように、今も昔も恋愛では美男美女であることが有利。そうでない男女の怨嗟の声がこの文句である。添え絵は彩りのかけらもない真っ黒なカラス。

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歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「かねより心たよ(金より心だよ)」。なかなか気風のいい文句だが、添え絵はお多福の面が付いた熊手。商売繁盛のご利益がある酉の市の縁起物である。本音は「心より金」で、文句の方はリップサービスと見るべきだろう。

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歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「たよりがきゝたいよ(便りが聞きたいよ)」。遊女が音信のない情夫を気にしているようだ。添え絵は飛脚箱。斎藤月岑が著した『増訂武江年表』の安政元年(1854)の項には「此の頃、町飛脚といふもの市中へ出て、書簡を…

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「ふまれて人になつたよ(踏まれて人になったよ)」。顔見世で値踏みされ、馴染みになった旦那に身請けされ、ようやく苦界から逃れることができた遊女。彼女の「人になる」という言葉の何と重いことか。添え絵は男物の…

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歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「のほせあがたよ(のぼせ上がったよ)」。添え絵は湯桶と手ぬぐい。銭湯の必需品である。「銭湯の湯にのぼせるにも、遊里の女にのぼせるにも、お金が必要」という繋がりで描かれたのだろうか。

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歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「むすんたゑんだよ(結んだ縁だよ)」。添え絵は男女の名を書いて結んだ紙縒り。手前は「よしの」&「久松」と書いてあるように見えるが、もし「お染」&「久松」なら宝永7年(1710)に大阪で心中事件を起こしたカップル…

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歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「初かいからほれたよ(初会から惚れたよ)」。添え絵は盃台。初会には遊女と客が盃を交わす「引付」という儀式がある。顔合わせの意味があるのだが、若い者が盃を中継して酒を注ぎ、それを口に付ける振りをする。酒の…

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歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「さきをいそくよ(先を急ぐよ)」。添え絵は貸本の山。物語の先が知りたくて、飛ばし読みをするのはよくあること。でも遊里は初会、裏を経てやっと床入りとなる。急ぎたくても急げない場所なのだ。

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歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「おそろしいこゝろたよ(恐ろしい心だよ)」。添え絵は鬼女の面と杖。廓で怖くて年を食った女性といえば遣手婆。遊女を脅したり、なだめたりしながら、客から金をむしり取る。非情な心がなければ勤まらない因果な商売…

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歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「一とよきりたよ(一夜きりだよ)」。添え絵は笄と髪紐。

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歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「てなへさけてもぬしのそは(手鍋提げても主のそば)」。沢村版『つじうらづくし』の「てなべさげてもいとはない(手鍋提げても厭わない)」と同じ状況だが*1、「主のそば」に一途な想いが強く感じられる。添え絵は手…

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「やきもちふかいよ(焼き餅深いよ)」。長火鉢には敷き詰めらた餅。どうやらこれからやけ食いをする気配。女性をここまで追い込んだ男の罪は深い。

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「たかゝとまつているよ(高々とまっているよ)」。添え絵を見ると、肥桶に入った長柄杓にトンボが止まっている。トンボは涼しげに止まっているがその先は汚物。お高くとまった花魁も苦海の住人であることに変わりはな…

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「ゆめにまて見る(夢にまで見る)」。「恋焦がれて愛する人を夢にまで見る」状態なのだが、添え絵は『荘子』の説話にある「胡蝶の夢」。事ここに至れば、「働き者が遊郭に来て遊びに興じているのか、遊客が廓外に行っ…

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「おこりきつているよ(怒りきっているよ)」。愛深ければ、裏切られた時の怒りも深い。「今日行く」と言われて、すっぽかされた時などは。添え絵は「怒る」と「起こる」を掛けて、火鉢の中で真っ赤になった炭火が描か…

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「茶にしてはいやたよ(茶にしては嫌だよ)」。酒席なのに「(下戸なので酒じゃなく)お茶にして」と要求する客は遊女にとって嫌な客だ。茶屋に落とす金は少ないし、酔ってないから手練手管も通じない。添え絵は角型の…

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「しのんておいてよ(忍んでおいでよ)」。以前紹介した沢村版の『つじうらづくし』や『花のたよりこいの辻占』にも同様な文句があるが*1、先方の添え絵が「垣根」であるのに対して、こちらは「衣桁に掛けられた男女の…

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「かこのとりたよ(籠の鳥だよ)」。遊里に押し込められて廓外へ出られない遊女の嘆きが聞こえてくるようだ。添え絵は空の鳥籠。置屋からの解放を待ち望む彼女達の心情を投影したものだろうか。

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「あまくくわせられたよ(甘く食わせられたよ)」。騙される意味で「一杯食わされる」という表現があるが、遊女に甘い言葉で騙されたのだろうか?添え絵は「甘いもの」繋がりで羊羹。経木らしきものに包まれ、紙製?の…