2011-01-01から1年間の記事一覧

膝栗毛滑稽辻占 その7

歌川重政画『膝栗毛滑稽辻占』第6コマは戸塚。茶店でおばさんに絡まれ押し黙る喜多さんを弥次さんがニヤニヤしながら眺めている。『膝栗毛』で喜多八は元旅役者という設定なので、女がその美形をぶりを囃し立てているのだろう。添え文の「とつかまへてはは…

膝栗毛滑稽辻占 その6

歌川重政画『膝栗毛滑稽辻占』第5コマは程ヶ谷の宿。厠で用を足そうと弥次さんが帯を解いたところバランスを崩して板壁に激突、釘が外れて板ごと転落。外にいた喜多さんがびっくりという図。『膝栗毛』の該当箇所には記述がないことから、オリジナルなのか…

膝栗毛滑稽辻占 その5

歌川重政画『膝栗毛滑稽辻占』第4コマは神奈川。男が打ち水を弥次さんに掛けてしまい、喜多さんから怒られている。当時の往来は未舗装で、交通量の多い宿場付近は行き交う人や荷車のせいで土ぼこりが立ちやすかった。それを防ぐために水を撒いていたのだろ…

膝栗毛滑稽辻占 その4

歌川重政画『膝栗毛滑稽辻占』第3コマは川崎。「身はいましめのつたかつら(身は戒めの蔦葛)」。十返舎一九の『膝栗毛』に弥次郎兵衛が喜多八を狐が化けたものと勘違いして縛り上げるシーンがあるが、それは赤坂宿(愛知県)手前での出来事。川崎にはその…

膝栗毛滑稽辻占 その3

歌川重政画『膝栗毛滑稽辻占』第2コマは品川。「あさのわかれにひく袖か浦(朝の別れに引く袖が浦)」。早朝日本橋から同道した見送り人は、高輪の大木戸や品川宿の先、鮫洲でお別れをする。その名残惜しそうな情景が描かれている。だが品川宿には岡場所*1…

膝栗毛滑稽辻占 その2

歌川重政画『膝栗毛滑稽辻占』第1コマは日本橋。「お江戸日本橋七つ*1立ち」というように旅立ちの朝は早い。天秤棒で肥桶を担ぐ男を2人連れが「こひのおもにをかたにうけ(恋の重荷を肩に受け)」と洒落のめしているが、当時のし尿は貴重な肥料源(下肥用…

膝栗毛滑稽辻占 その1

これまで「今日の辻占」のコーナーで辻占絵の紹介をしてきたが、本日からはちょっと趣向を変えて辻占にちなんだ玩具絵を眺めてみたい。 今回取り上げるのは歌川重政*1の『膝栗毛滑稽辻占』(画像)。彼は初代広重の弟子で後に広重の養女と結婚して三代広重と…

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』最後のコマは、「はつれはないよ(はずれはないよ)」。当たり矢の封じ目がついた手紙の絵が添えられているが、遊女からお客に出す手管の手紙だろうか?男のハートを射抜いてみせるという自信があふれた文句だ。また、版元が…

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「いつておしまいよ(言っておしまいよ)」。布の入った椀、川、橋の絵が添えてあるが、意味がよくわからない。もしかするとなぞなぞの一種かもしれない。

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「すいな人たよ(好いな人だよ)」。晴れて所帯を持った女性の惚気だろうか。添え絵は家庭の日常のひとコマを切り取ったような風景で、食器を入れた桶に手ぬぐいが掛けてある。

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「とつくりとしあんをおしよ(とっくりと思案をおしよ)」。何の思案を迫っているかはわからないが、添え絵は「とっくり」の音から「徳利」が描かれている。このセンスは地口絵に近い。

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「さましてたんとおあかりよ(冷ましてたんとお上がりよ)」。竃の傍らにお盆に乗ったサツマイモが置いてあるが、この文句は遊女に対する遣り手婆のものだろうか?女性が甘いものを好むのは今も昔も変わりがないが、芋…

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「こゝころにせうまいおろしたよ(心に錠前下ろしたよ)」。錠前が掛かった「心」と書いた絵馬が添えてある。絵馬は神仏に願い事をするために奉納されるが、男女の間での願い事といえば永遠の愛か、縁切り。遊女は金蔓…

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「かたおもいたよ(片思いだよ)」。「磯の鮑の片思い」ということで、添え絵はアワビ。殻の模様が大変リアルなので、スケッチを元にしているのかもしれない。

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「ます花かてきたよ(まず花ができたよ)」。添え絵は咲き初めの桜。花が出来て実を結ぶように、廓ではまず恋の花が咲き、そして身請けの話になるということか。

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「わりきつているよ(割り切っているよ)」。端唄の本と三味線の撥が描かれていることから、当時の芸者さんの言葉と思われる。「芸は売っても身は売らぬ」とはいうものの、生活の安定のためにはパトロンの庇護が必要。…

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「へだてはいやだよ(隔ては嫌だよ)」。部屋の空間を仕切る屏風の絵が添えられているが、物理的な問題だけではない。当時の廓の恋には男心・女心の壁、貧富の壁の他に、士農工商の身分の壁、正妻と妾の壁など現代には…

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「むかふみつたよ(向こう見ずだよ)」。豆絞りの手ぬぐいの鉢巻と江戸張提灯から祭礼で神輿などを担ぐ気風のいい江戸っ子が目に浮かぶ。

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「けむつたいよ(煙ったいよ)」。「煙ったい人」という意味もあると思うが、煙突の絵が添えられている。煙は二方向に流れており、右奥方向はスッと立ち上り、左手前方向は強風に吹き流されているように見える。これは…

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「しんにかわいゝよ(真にかわいいよ)」。芥子坊主風の女児の人形が描かれているが、かわいらしさがあまり伝わってこない。手元に置いて遊んでいると、無愛想でもかわいく感じるんだろうか。

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「ちゑがあるよ(知恵があるよ)」。添え絵の手前は木組みを利用したパズルで、後は中国式知恵の輪「九連環」の一種だろうか?大雑把に描かれているため、判別できず悔しい。

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「だまされたよ」。添え絵はお稲荷さんに奉納する狐の小像。神様の使いになったり、人を騙したりと狐にも善玉、悪玉がいるんだなぁと改めて感じる。

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「あめをくわせられたよ(飴を食わせられたよ)」。「御飴」と描いた棒飴の袋と「白玉」と描いた袋の絵が添えてある。「飴と鞭」という言葉もある通り、人心の掌握には鞭だけでなく飴も必要。遊郭にとって遊女は金の卵…

「とらやの羊羹」でおなじみの株式会社虎屋の赤坂本店で、第74回虎屋文庫資料展「和菓子を作る−職人の世界−」展[9月28日(水)〜11月6日(月)10:00〜17:30。会期中無休、入場無料]が開催されます。和菓子製造の写真・動画、製造道具、製菓関係史料…

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「つらかにくいよ(面が憎いよ)」。鬼の面と張扇の絵が添えてあるが、遊女を折檻する遣り手婆のことをいっているのだろうか。

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「あわせものたよ(合わせものだよ)」。添え絵は貝合わせの貝。ハマグリで作られ蝶番がぴったり合うのは1組しかないため、夫婦和合の象徴として婚礼道具の一つにもなった。文句の意味は「お似合いの二人だね」といっ…

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「とうふにかすかいたよ(豆腐にかすがいだよ)」。「糠に釘」、「暖簾に腕押し」のように手ごたえのない様を示す慣用句だが、添え絵を見るとお盆に載せた豆腐に「かすがい(鎹)」が打ち込まれている。なるほど木のお…

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「まけてもあふきたよ(負けても逢う気だよ)」。遊女が好いた客に頻繁に逢いたくなるのは人情だとしても、常連客に対し代金をディスカウントするシステムは遊郭にはなかった。むしろなじみ客になるほど、衣替えの着物…

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「おまよいてないよ(お迷いでないよ)」。田圃の中の一本道と道標が描かれているが、吉原は浅草寺の裏手の田圃の中にあったので、廓へと向かう道中と思われる。文句の本当の意味は「迷子になるな」ではなく、「逡巡し…

今日の辻占

歌川房種画『新板辻うらづくし』より、「きしようまであけるよ(起請まであげるよ)」。遊女が客に出す起請文、「年季が明けたら一緒になります」とか書いてあるけれど本心かどうか疑わしい。添え絵として寝床が描かれているが、同床異夢を暗示しているのだ…