辻占菓子

辻占応用の新製品その1

辻占応用の新製品その1 幕末時、煎餅、豆、花林糖、昆布などに添えられていた辻占の紙片が、明治に入ると更に多くの商品で見られるようになる。 (1)「辻うら香」 明治4年12月10日付の『横浜毎日新聞』に東京日本橋四日市の洋書販売店・和泉屋半兵衛が…

銭湯と辻占菓子

銭湯と辻占菓子 明治5年に仮名垣魯文が書いた滑稽本『胡瓜遣』に辻占入りの砂糖豆が登場する。(参照:『明治の文学 第1巻 仮名垣魯文』筑摩書房、平成14年) 「下卑の食乱」は、バイト代を手にした貧乏書生が東京の街を散歩しつつ、様々な食べ物を手当…

劇場と辻占菓子

劇場と辻占菓子 劇作家の岡本綺堂は随筆集『明治劇談 ランプの下にて』(青蛙房、昭和40年)の中で、幼い頃の芝居見物について語っているが、そこに辻占菓子が登場する。明治12年3月9日、新富座での一こまである。 幕の間に、わたしは父に連れられて劇…

辻占昆布の道

辻占昆布の道 明治12年に書かれた河竹黙阿弥の『人間萬事金世中』の中に、辻占昆布の行商人が登場する。 花道より千之助散切鬘(ざんぎりかつら)襤褸装(つづれなり)藁草履にて、辻占昆布の入りし箱を肩に掛け出来り、 千之 「辻占昆布ぢや、板こぶぢや…

開国と辻占菓子

開国と辻占菓子 鎖国から開国へと国策が転換し、欧米との交流が盛んになっていくと、辻占菓子も国際化の波にさらされるようになる。明治8年8月29日付の『讀賣新聞』には、西洋の辻占菓子を入手した者が次のような投書を寄せている。 私が此間西洋の辻占…

江戸以外での幕末維新期の辻占菓子

江戸以外での幕末維新期の辻占菓子 これまでずっと江戸の辻占菓子について見てきたが、この時期、他の地域ではどうだったのだろう? 幕末頃の大阪で作られたとみられる『浪花みやげ』という摺物を集めた本には、昆布を持った女性(写真)を描いた『辻占言葉…

『街の姿』と辻占菓子

『街の姿』と辻占菓子 明治期に活躍した玩具蒐集家の清水晴風は、幕末の行商人の絵姿を『街の姿 江戸篇』(太平書屋、昭和58年)に描き残しているが、その中に辻占菓子を行商する者がいた。 ・辻うら売 淡[路]島通ふ鵆(ちどり)、恋の辻うら、辻うら豆[…

幕末維新の辻占煎餅名店めぐり5「越後屋清蔵」、他

幕末維新の辻占煎餅名店めぐり5「越後屋清蔵」、他 今回は、主に人形町通り新乗物町の「越後屋清蔵」について取り上げる。早稲田大学演劇博物館『近世・近代風俗史料貼込帖』に、こちらの店の「新板はうた煎餅」の引札が収録されている。 鶏卵所 新板はうた…

幕末維新の辻占煎餅名店めぐり4 「清眞堂」と「金澤村井」

幕末維新の辻占煎餅名店めぐり4 「清眞堂」と「金澤村井」 今回は八丁堀に舞台を移し、「清眞堂」と「金澤村井」を取り上げる。木村捨三の「続々商牌集 其二 遠月堂菓子店」で、大伝馬町の梅花亭と共に遠月堂の辻占煎餅に追随したと名指しされた八丁堀の清…

幕末維新の辻占煎餅名店めぐり3 「梅花亭森田」

幕末維新の辻占煎餅名店めぐり3 「梅花亭森田」 第3回では望月堂から更に市中を南下して、大伝馬町三丁目(現在の日本橋大伝馬町)にあった「梅花亭森田」を取り上げる。 木村捨三の「続々商牌集 其二 遠月堂菓子店」では「大伝馬町の梅花亭」、淡島寒月の…

幕末維新の辻占煎餅名店めぐり2 「望月堂」

幕末維新の辻占煎餅名店めぐり2 「望月堂」 第2回は、遠月堂から見て浅草橋を渡った反対側(横山町三丁目:現在の日本橋横山町)にあった「望月堂」という店を取り上げる。 淡島寒月は、『梵雲庵雑話』(平凡社、平成11年、P.123)で次のように述べてい…

幕末維新の辻占煎餅名店めぐり1 「遠月堂」

幕末維新の辻占煎餅名店めぐり1 「遠月堂」 ここからは数回に分けて、幕末維新の辻占煎餅の名店について紹介したい。第1回は、柳橋そばの浅草茅町(浅草橋の北詰東)にあった「遠月堂」を取り上げる。 昭和8年9月発行の趣味誌『集古』(集古会)P.501に…

辻占煎餅と大黒煎餅

辻占煎餅と大黒煎餅 辻占煎餅のルーツに関して、甲南女子大学文学部の菊池眞一教授が以下のような指摘をされている。 『は唄恋の辻うら』(上田市立図書館花月文庫)の序題は「??辻占選餅初編序」(二文字分不明)となっているが、その序文は次のようなも…

『花鳥風月』と辻占菓子

『花鳥風月』と辻占菓子 弘化初年に春水の門人によって書かれ、春水名義で出版された『花鳥風月』にも辻占菓子が登場する。蔵前の鶴亀屋の娘お柳が、銚子にいる貞次郎を慕って店からの出奔を決意する場面である。 ―忍ぶ恋路はさてはかなさヨこんど逢ふのがい…

『春の若草』と辻占煎餅

『春の若草』と辻占煎餅 辻占菓子という商品は、いつ、どこで、何のために作り出されたのか?この謎に迫るべく、時代を遡りたい。 辻占菓子が登場する文献で今のところ一番古いものは、江戸時代の天保年間に為永春水が書いた人情本『春の若草』である。この…

辻占菓子の商品的位置付け

辻占菓子の商品的位置付け 「現代の辻占菓子その1〜4」を見て、辻占菓子がどういったものかおぼろげながらおわかりいただけたろうか。世間には占いに関する商品があふれているが、辻占菓子はどういった位置付けになるのだろう?試みに以下のように分類して…

現代の辻占菓子その4 「辻占豆」

現代の辻占菓子その4 「辻占豆」 写真は福岡県朝倉市にあるハトマメ屋仲山製菓の「金トキ豆」。豆の袋の中には紙片が入っており、上段には辻占の文句や吉凶が、下段には都々逸が記してある。こちらの紙には、「大吉−うれしいことばにえだしださかえほんにい…

現代の辻占菓子その3 「餅系辻占菓子」

現代の辻占菓子その3 「餅系辻占菓子」 写真は、石川県白山市谷保屋の「辻占」(新年の期間限定品)。もち米と砂糖で餅(柔らかさはしんこ餅に近い)を作って筑羽根の形にし、その中心にたたんだ紙片を入れている。写真の紙片の文句は「妾ばかりにいわせて…

現代の辻占菓子その2 「最中風辻占菓子」

現代の辻占菓子その2 「最中風辻占菓子」 写真は、石川県金沢市諸江屋の「辻占・福寿草」(新年の期間限定品)。薄い煎餅種を福寿草の花の形にして中に紙片を入れ、外に雪に見立てた砂糖が掛けてある。写真の紙片の文句は「うそハたから」で、『嘘も方便』…

現代の辻占菓子その1 「辻占煎餅」

現代の辻占菓子その1 「辻占煎餅」 写真は、新潟県三条市小林製菓所の「辻占いせんべい」。大きさの比較のため、コーラ−缶と並べてみた。こちらでは瓦煎餅系の生地の上に紙片を乗せて半月状にたたみ、更に弦の部分を2つ折りにして形を整えている。中の紙片に…

辻占菓子とは

辻占菓子とは 紙片に種々の文句を記し、巻煎餅などに挟んだもので、これを取ってその時の吉凶を占う。昔は遊郭を中心に街中でもよく見られたが、戦後急速に姿を消し、現在は京都・伏見稲荷のお土産や一部地域の迎春菓子として、細々と作られている。明日から…